お酒を飲むと顔がすぐ赤くなったり、たばこを長年吸っていたり、熱いものをよく飲んだりする方は食道がんに注意が必要です。
食道がんとは
のどと胃をつなぐ管状の臓器を食道と呼び、そこにできるがんを食道がんといいます。食道がんの約半数は「中部食道」という食道の中央付近に発生します。
2023年の部位別がん死亡数(※1)では、食道がんによる死亡数は男性で8,647人(大腸がん:27,936人、胃がん:25,325人)、女性で2,103人(大腸がん:25,195人、胃がん:13,446人)と、大腸がんや胃がんと比べると少ないです。
しかしながら、部位別がん5年相対生存率(※2)は胃が60%台、大腸が70%台であるのに対して、食道は40%台と低く、注意が必要ながんと言えます。
※1:厚生労働省「2023年人口動態統計(確定数)」
※2:地域がん登録によるがん生存率データ(1993年~2011年診断例)(5年生存率)
食道がんの初期症状と進行時のサインとは?
食道がんの初期は自覚症状がないことがほとんどです。がんが大きくなるにつれて食道が狭くなり、食べ物が胸につかえたり、嘔吐することがあります。また、食事量が減り体重が減ってきます。
がんがさらに進行して、食道の壁を越えて周囲にある肺・骨・大動脈などに浸潤すると、胸の奥や背中に痛みを感じることもあります。また、がんが大きくなり、気管や気管支を圧迫・浸潤すると、それによって咳が出たり、声を出す時に動く声帯を調節している神経にがんが浸潤すると声がかすれる(嗄声)こともあります。
食道がんの検査方法
食道がんは主に上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)や上部消化管造影検査(バリウム検査)によって発見されます。早期の食道がんでは凹凸が目立たないケースも多いため、早期発見のためにはバリウム検査よりも胃カメラの方が有用です。
胃カメラ検査の中でもNBI(狭帯域光観察:Narrow Band Imaging)という、特殊な波長の光を使用して観察することで、粘膜の細かい表面の構造や血管をくっきりと映し出すことができるため、早期の食道がんを発見することができます。
食道がんの治療法
食道がんが粘膜という一番表層のところまでに留まっている早期がんであれば内視鏡治療(胃カメラによる切除)が適応されることが多いです。ただし、早期がんの中でも、がんが粘膜筋板(粘膜の一番下)に達しているか否か、食道の全周に及んでいるか否か、長さが5cmを超えるか否かなどによって内視鏡治療ではなく手術・化学療法・放射線治療などになることもあります。
粘膜より深いところまでがんが浸潤している場合は、その深さやリンパ節転移や遠隔転移(肝臓や肺などの離れた臓器への転移)の有無によってステージ(病期)が決まり、ステージに合わせて、手術・化学療法・放射線治療・緩和治療などの治療を選択することとなります。
食道がんになりやすい人の特徴とリスク要因
食道がんは女性に比べて男性が約5倍多く発症すると言われています。これは食道がん(中でも扁平上皮がん)の主な要因である喫煙と飲酒が男性に多いことによると言われています。
飲酒により体内に生じるアセトアルデヒドは発がん性物質であり、この物質をアルデヒド脱水素酵素のALDH2で代謝しています。このALDH2の活性が遺伝的に弱い欠損型、つまりお酒を飲んですぐ顔が赤くなる人は発がん性物質を上手く代謝できず、食道がんになるリスクが高くなると言えます。
また、喫煙者では2.77倍、飲酒者では2.76倍と、それぞれ食道がんのリスクが高まることが確認されています。さらに、喫煙と飲酒の両方の習慣がある場合、そのリスクは8.32倍に跳ね上がると報告されており、飲酒や喫煙が食道がんの発症に大きく関与していることがわかります。(※3)
加えて、飲み物の温度にも注意が必要です。イランで5万人を対象に行われた研究では、「普段飲んでいる飲み物の温度に応じて食道がんのリスクが上昇。70度を超える熱いお茶を飲む人は、65 度を下回るぬるいお茶を飲む人より、食道がんの罹患率が8倍高かった。」という結果が出ています(※4)
その理由に関してはまだはっきりしていませんが、熱い飲み物が食道の内側の膜を損傷させ、その膜の修復作業で細胞分裂が繰り返されることで、がんになりやすくなるのではないかとも言われています。
※3:愛知県がんセンター プレスリリース
「喫煙と飲酒の組み合わせが食道がん罹患リスクを上げることを日本人約16万人の統合解析によって解明」
※4:Farhad Islami, et al. Tea drinking habits and oesophageal cancer in a high risk area in northern Iran: population based case control study. BMJ. 2009 Mar 26;338:b929.
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✔飲酒(特にすぐ顔が赤くなる人)
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✔喫煙
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✔熱い飲み物を好む人
これらの習慣がある方は、食道がんに注意が必要です。1~3年に1回は胃カメラ(上部消化管内視鏡)検査を受け、早期発見・早期治療を心がけましょう。