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胃のバリウム検査と胃カメラ(内視鏡検査)どっちがいい?

胃のバリウム検査と胃カメラ(内視鏡検査)どっちがいい? 内視鏡

健康診断の胃がん検診の方法として、バリウム検査と胃カメラ(内視鏡検査)の2つの方法があります。それぞれメリット・デメリットがありますが、胃カメラ(内視鏡検査)の方が良いと最初にお伝えします。

3D(三次元)で見るか2D(二次元)で見るか

胃のバリウム検査とは、飲んだバリウムを胃の中で広げながらレントゲン(X線)で撮影して胃の形状や表面の凹凸を見る検査です。3D(三次元)の立体的な胃を2D(二次元)の平面のレントゲン写真という形で観察します。もちろん様々な方向から撮影しますが、どうしてもその情報量は立体的に直接見る方が多くなります。胃カメラの場合、カメラの先から空気を出して胃を拡げて隅々まで観察することもできます。

形が変わらず色だけが変わる早期胃がんがある

早期の胃がんには胃の粘膜に僅かな凹みや出っ張りがみられるパターンがあり、これらは場合によってはバリウム検査でも見つけられることがあるかもしれません。ただし、早期の胃がんの中には胃の粘膜の色だけが変化するものもあるのです。これはバリウム検査では絶対に分かりません。

バリウム検査は二度手間で放射線被ばくや腸閉塞・大腸穿孔のリスクも

バリウム検査で異常があった場合、胃カメラ(内視鏡検査)を受けることになります。胃カメラ(内視鏡検査)で異常があった場合は、がんが疑われればその場で生検(胃の粘膜の一部を採取して顕微鏡で見る検査〔病理組織検査〕に回す)を実施します。つまり、病気の診断・治療までの道のりがバリウム検査を挟むことで遅くなってしまうのです。

また、バリウム検査は放射線を被ばくします。1回のバリウム検査での被ばく量自体は全く問題にはなりませんが、被ばくは発がんリスクとなるため、何十年も毎年バリウム検査を受け続けることは推奨しません。さらに、バリウムが腸に詰まって腸閉塞という病気を起こして入院したり、バリウムが詰まることで腸の内圧が高くなって腸穿孔(腸に穴があく)になって緊急手術となってしまったりするリスクもあります。

バリウム検査には良い所はないの?胃カメラに悪い所はないの?

バリウム検査の良いところは、検査が比較的簡便でバス検診でも実施可能で胃カメラに比べると安価であることが挙げられます。また、スキルス胃がんという進行の早いタイプのがんは粘膜の下をはうようにがんが広がり、胃全体が全周性に収縮している特徴的な形状となりますが、バリウム検査は胃の全体像の把握が得意なのでスキルス胃がんを診断しやすいと言われています。
進行したスキルス胃がんに関してもしっかり知識・経験のある内視鏡専門医が検査を行う胃カメラであれば診断できますし、スキルス胃がんの初期は胃カメラでしか分かりません。

胃カメラのデメリットは局所麻酔薬(喉の麻酔)や鎮静剤(眠くなる薬)に対するアレルギー反応を起こすリスクや副反応で呼吸が弱くなって命に関わる偶発症を起こすリスクがあることです。その他、粘膜損傷・出血・穿孔といった偶発症のリスクもあります。しかし、これらのリスクに関しても確かな技術・知識・経験のある内視鏡専門医が実施していればまず問題なく安全に検査が受けられます。

内視鏡専門医として胃カメラ検査を勧める立場でもあるのでかなり胃カメラよりの記事となりましたが、現実的にバリウム検査と胃カメラ検査どちらが良いかと言われれば圧倒的に胃カメラの方が良いと思います。何となく毎年胃のバリウム検査を受けているという方は、胃カメラ(内視鏡検査)への変更をお考え下さい。