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放置厳禁!ピロリ菌の感染経路と治療法について解説

放置厳禁!ピロリ菌の感染経路と治療法について解説 内視鏡

ピロリ菌の基本情報

ピロリ菌(正式名称:ヘリコバクター・ピロリ)は、胃内に生息する細菌です。この細菌はアルカリ性のアンモニアを作り出す能力を持ち、強い酸性環境である胃の中でも生き延びることができます。研究によれば、ピロリ菌は慢性胃炎(萎縮性胃炎)や胃・十二指腸潰瘍、さらには胃がんの発症原因とされています。

感染経路について

ピロリ菌は主に口を通じて感染します。例えば、感染した大人が赤ちゃんに口移しで食べ物を与えたり、糞便に汚染された食物や水(井戸水など)を摂取することが原因となる場合があります。特に乳幼児期(4歳頃まで)は感染しやすい時期とされ、成人になってからの新たな感染は稀と報告されています。

ピロリ菌感染による健康被害

ピロリ菌による胃粘膜のダメージ

ピロリ菌が分泌する酵素「ウレアーゼ」は、胃粘液中の尿素を分解し、アンモニアを生成します。このアンモニアが胃の粘膜を傷つけ、炎症を引き起こします。長期間にわたり炎症が続くと、胃粘膜が萎縮し、萎縮性胃炎が発生します。この萎縮性胃炎はほとんどが無症状ですが、場合によっては胃痛や膨満感、胃の重さを感じることがあります。

重大な健康リスク

ピロリ菌感染は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因にもなります。これにより腹痛や黒色便(胃酸による血液の変色)が発生することがあります。また、胃がんを発症した場合、初期は無症状で進行することが多く、胃の痛み、不快感、吐血、体重減少など多岐にわたる症状を引き起こします。

ピロリ菌感染を確認する検査方法

ピロリ菌感染を確認するには以下のような検査があります。

血液検査・尿検査

ピロリ菌に対する抗体の有無を調べる手軽な方法ですが、除菌後も陽性反応が続く場合があるため注意が必要です。

尿素呼気試験

呼気を調べることでピロリ菌の有無を確認します。高い精度を持つため、診断や除菌判定に推奨される方法です。

便中抗原検査

糞便中のピロリ菌を直接検出する方法で、現在の感染状態を確認できます。ただし、便の提出が必要なため普及度は限定的です。

内視鏡検査(胃カメラ)

胃の粘膜を採取し、顕微鏡観察や化学的な反応で診断します。その場で結果が分かる迅速ウレアーゼ法が一般的です。

ピロリ菌は放置しても大丈夫?

放置せず除菌を推奨

ピロリ菌は放置すると胃がんや胃潰瘍、機能性ディスペプシアなどの発症リスクを高めるため、早期の除菌治療が推奨されます。研究では、除菌治療によって胃がんの発生率が半分から3分の1に減少し、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発もほぼ抑制されることが確認されています。さらに、次世代への感染予防のためにも重要です。

ピロリ菌の除菌方法

一次除菌

ピロリ菌の除菌治療では、胃酸分泌抑制薬「ボノプラザン」と2種類の抗生物質「アモキシシリン」「クラリスロマイシン」を1日2回、7日間服用します。これを1次除菌と言います。薬の飲み忘れなどがあると除菌成功率が下がってしまいますが、この治療で約90%の成功率が報告されています。

二次・三次除菌

一次除菌が失敗した場合、抗生物質「クラリスロマイシン」を「メトロニダゾール」に変更した二次除菌が行われます。一時除菌と同様に1日2回7日間続けて服用して除菌を行います。二次除菌も失敗した場合は三次除菌が必要となりますが、三次除菌は保険適用外となり、自費診療となる点に注意が必要です。

まとめ

ピロリ菌は健康に大きな影響を及ぼす可能性があるため、早期発見と除菌治療が重要です。胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)などの適切な検査を受け、必要に応じて治療を進めましょう。