健康コラム もっと知りたい!
内科・内視鏡・健康診断の話

健康コラム もっと知りたい!内科・内視鏡・健康診断の話

健康コラム タイトルイラスト1 健康コラム タイトルイラスト2

若者に多い潰瘍性大腸炎、繰り返す下痢や血便…その症状大丈夫?

若者に多い潰瘍性大腸炎、あなたのその症状大丈夫? 内視鏡

数カ月に1度、腹痛・下痢・血便(便に血が混じる)といった症状を繰り返していませんか?
若い方で大腸がんになるケースはほとんどありませんが(ゼロではないため軽視はできません)、潰瘍性大腸炎という病気の可能性があります。

潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎 イラスト

潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)の1つで、大腸の粘膜に炎症が起きることによりびらんや潰瘍ができる原因不明の慢性の病気です。潰瘍性大腸炎は厚生労働省から難病に指定されていますが、適切な治療を受けて症状を抑えることができれば、健康な人とほとんど変わらない日常生活を送ることが可能です。
2015年の調査で、日本に22万人いる(※1)と言われており、年々その数は増えています。日本での発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性で25~29歳にみられ(※2)、働き盛りの世代で発症することが多いと言えます。

潰瘍性大腸炎の原因は不明?

原因は現段階では不明で、遺伝的な要因や環境的な要因(食事やストレスによる腸内細菌叢の変化)、免疫の異常(自己免疫反応)が関係しあって発症していると考えられています。

症状

腹痛・下痢・血便といった症状を引き起こします。症状が悪化すると発熱・貧血などが生じることもあります。治療を受けていなくても一時的に症状が治まることもあり、数カ月毎に症状を繰り返すまで気付かず、病気の発見が遅れてしまうこともあります。

検査

大腸カメラの検査(大腸内視鏡検査)にて粘膜に特徴的な炎症所見(血管透見の消失した際顆粒状粘膜・粗造な粘膜・びらん・潰瘍)を直腸から連続して認めます。

治療

残念ながら潰瘍性大腸炎を根本的に治す治療方法はありません。5-ASA製剤という飲み薬や座薬で治療する事が基本治療となります。重症度に応じて、ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤を使用することもあります。治療によって症状がなくなり、大腸カメラの検査でも大腸の粘膜の炎症所見がなくなった状態を寛解状態といいます。

治療を途中でやめてしまったりすると…

寛解状態が得られても薬を継続する必要があります。薬をやめてしまうと再燃(活動期)といって再度大腸の粘膜に炎症がおきて腹痛・血便・下痢の症状が起こってしまいます。寛解と再燃(活動期)を繰り返すと、どんどん炎症の範囲が広がってしまいます。酷くなってしまうと大腸がんを発症したり、大腸をすべて手術で切除しなくてはならなくなったりすることもあります。潰瘍性大腸炎の診断を受けた場合は「良くなった。」「治ったな。」と自己判断して薬をやめずに薬を継続して、寛解状態を維持することが非常に重要となります。また、生物学的製剤などの高額な治療を受けている場合、指定難病の患者さん向けの医療費助成制度を使用することができます。難病指定医の医師のいる医療機関で診療を受けることをお勧めします。

若くても腹痛・下痢・血便の症状が続いていたり、繰り返していたりする場合は一度大腸カメラの検査(大腸内視鏡検査)を受けていただくことをお勧めします。また、中年から高齢の方での潰瘍性大腸炎の発症の報告も増えてきています。難病とは言え、治療薬の進歩もあり、しっかりと治療を受けて寛解状態を維持できれば健康な人とほとんど変わらない日常生活を送ることが可能です。

※1 Murakami, Y., et al.: J. Gastroenterol., 55: 131, 2020
※2 難病情報センターホームページ:潰瘍性大腸炎(指定難病97)